オール水元スポーツクラブは、葛飾区内の4つの地域が一体となって取り組むスポーツクラブということから「オール水元」と命名された。スポーツを通じた「健康づくり、仲間づくり、活力づくり」を理念に、会員みんなの力で、誰もが身近な場所でスポーツに親しめる環境づくりを目指している。
障がい者スポーツ指導員が複数在籍していることもあり、障害のある方の参加が可能なプログラムがある。また、クラブの活動以外でも、都立特別支援学校活用促進事業において、都や東京都スポーツ文化事業団と連携しながら水元小合学園や水元特別支援学校で、ブラインドサッカーやスポーツレクリエーションの体験教室を開催している。植草久利(うえくさひさとし)理事長は「まだまだ障害のある方がスポーツをできる場が少ないので、ニーズに応えていきたいです」と語る。
クラブが取り組むプログラムの中で、現在、人気上昇中なのがボッチャ教室。東京2020パラリンピック競技大会での日本代表選手の活躍の影響、また、老若男女、健常者、障害者問わず、誰でも一緒に楽しむことができるのが、人気の秘訣となっている。
実際に教室の様子を取材し、参加している障害のある方に話を聞くと、ボッチャを楽しんでいる様子が伝わってきた。
「高校生のときからボッチャをやっていてボッチャ歴は18年くらい。住んでいるところは少し遠いのですが、やれる場所を求めて通っています。ボッチャは幅広い年齢層の方ができるので、この教室には90歳以上の方もいますし、コミュニティがすごく広がったと思います」(30代男性)
「まったく運動をしていなかったのですが、葛飾区の広報誌でこの教室の存在を知って参加しました。はじめはボールが全然飛ばなかったけど、教えてもらって今ではだいぶ飛ぶようになりました。障害のないの方とも一緒にできて毎週楽しみに来ています」(60代女性)
ボッチャ教室はリピート率が高く、参加者が増えているそうだが、初心者にはボッチャの指導経験が豊富なスタッフが、投げ方やルールを丁寧に教えてくれる。誰にでもできる手軽さに加え、ゲームの面白さもあり、今後はさらに人気が高まっていきそうだ。
そして、オール水元スポーツクラブの中でも高い人気を誇るのが、トランポリンスクールだ。年に一度、健常者と障害のある方も同時に跳べる“葛飾ユニバーサル交流大会”を開催し、日頃の練習の成果を発揮している。また、障害のある方だけのトランポリンのクラスがあることも、他の地域スポーツクラブにはない特徴と言える。
障がい者スポーツ指導員の関根清太郎(せきねせいたろう)さんは、障害のある方のみのクラスで心がけていることは、「特別扱いをしないこと」だと言う。
「まずケガをさせないようにすることが大前提となりますが、基本的には健常者と一緒です。障害によって対応の方法は変わりますが、注意するときは厳しく、特別扱いすることなく指導するようにしています」
参加者の保護者からも「トランポリンは普段使わない体の動きができますし、楽しみながら体を鍛えることができて、娘も毎週楽しみに通っています」、「大会があるのでそれがすごくいい経験になると思います。目的に向かって頑張るようになりました」といったポジティブな声を聞くことができた。
「東京パラリンピックの影響もあって今後も障害者スポーツのニーズは増えていくと思うので、スタッフの育成も増やして対応できるようにしていきたい」と植草理事長。
オール水元スポーツクラブは、「オール」の名のとおり、地域の方だけでなく、高齢の方から小さな子供まで、障害のある方もない方も、すべての人がスポーツを楽しめる場所をつくることを目指している。
取材・文/(株)ベースボール・マガジン社、撮影/小山真司