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陸上競技

八王子パラアスレティッククラブ

2025/03/07 掲載

 東京都八王子市で活動をしている知的障害者を対象とした陸上競技クラブチームです。競技会への出場を目的としており、走運動に必要な技術の習得や体力づくりに取り組んでいます。気兼ねなく話せる明るい雰囲気で、仲間や地域の方との交流を図りながら自身の可能性を広げ、生活の質を向上させることを目指しています。

お問い合わせ

hachioji-para-ac.since.2018@ymail.ne.jp
090-4714-3550(代表/佐藤圭司)

クラブ紹介

活動場所
東京フットボールセンター八王子富士森競技場
活動日時

水曜日(18:30-20:00)

土曜日(7:30-9:30)

登録者数

21人
指導スタッフ5人(代表1人・副代表1人・コーチ1人・伴走ボランティア2人)

会費の有無

年会費:5,000円
※スポーツ障害保険は別途、チームで加入します

活動紹介

 八王子パラアスレティッククラブは2018年、都立八王子特別支援学校陸上競技部の卒業生の受け皿として設立された。現在のメンバーは、同校と、都立八王子西特別支援学校陸上競技部の卒業生が中心で、近年では他校出身者や現役の高等部の生徒も参加している。登録者は16歳から27歳までの21人。積極的に競技会に参加しており、日本ID陸上競技選手権大会やWorld Para Athletics公認のジャパンパラ陸上競技大会といった国内最高峰の大会に出場する選手も輩出している。

 その確かな実力を作り上げているのが、週に2回の練習だ。指導しているのは、都立八王子西特別支援学校陸上競技部の顧問で、クラブの代表を務める佐藤圭司(さとうけいじ)さんや、JAAF(日本陸上競技連盟)公認ジュニアコーチの資格を持つスタッフら。競技パフォーマンスを上げるための基礎として、身体作り、動き作りを重視しており、練習の導入では、必ず実施している。佐藤さんは、「会話を理解しづらいメンバーもいるので、指導するときはマーカーコーンやチューブといった、モノを使って分かりやすくポイントを伝えたり、言葉で説明するときもなるべく具体的に話すようにしています」と、コミュニケーションの工夫について話す。

チューブを使って身体に負荷をかけていく
声をかけながら、トレーニングの手本を見せる佐藤さん

 取材に訪れた1月25日の練習は朝7時半から。メンバーらが続々と競技場に集合し、各々が「おはようございます!」と元気に挨拶をかわしてスタートした。全員で競技場の外周をジョギングしてウォーミングアップしたあと、輪になって入念に柔軟体操を行った。次にゴムのチューブの張力を利用して臀部に刺激を与え、また縄跳びでモモ上げや足首の角度などを意識してから、正しいフォームでダッシュを繰り返す練習に取り組んだ。佐藤さんが一人ひとりに「そう! 1本目よりうまくなってるよ!」「集中してやれば自分に返ってくるからね」などと声をかけると、メンバーも「はい!」と応えていた。

 その後は、短距離組と長距離組に分かれて、それぞれのトレーニングを実施。短距離組は、マーカーコーンを使用して接地の姿勢やピッチ向上のドリル練習に臨み、長距離組は翌日に大会を控えていたことから外周をジョギングしてコンディション調整を行った。

身体をほぐしたあと、全員で外周のジョギングからスタート
寒空の下、じっくりと時間をかけて準備体操を行っていく
短距離組はマーカーコーンの間隔を少しずつ広げてフォームを確認
翌日に大会参加を控えた長距離組はランニングで調整した

 限られた時間のなかで、内容の濃い練習に打ち込むメンバーたち。そのなかで印象的だったのは、常にチームが明るい雰囲気に包まれていたことだ。休憩時間などにはメンバー同士、またコーチや保護者らと談笑するなどして、和やかな空気が漂っていた。

 この緊張と緩和のメリハリが居心地の良さにつながっているようで、メンバーのひとりである三浦一星(みうらいっせい)選手は、「大会に向けてコーチの指導を受けてしっかり練習できるのがいいですね。普段の練習でも、仲間と楽しくコミュニケーションが取れるのが楽しいです」と、クラブの魅力を語ってくれた。三浦選手の特別支援学校時代の1年後輩にあたる宮脇宇洋(みやわきたかひろ)選手も、「先輩の言う通り、和気あいあいで楽しいです。学生時代から続けてきた陸上を、地元のこのクラブで継続して取り組めてよかったです」と話し、笑顔を見せていた。

三浦選手(左)と1年後輩にあたる宮脇選手は、互いに「良いライバル関係。それが成長につながっている」と話す

 また、現在のところ、女子選手の登録者数は2人。湯澤朱梨(ゆざわあかり)選手と高橋明来(たかはしあきら)選手は、「女子選手があと2人増えたらリレーのメンバーが組めるんです。その日が来たら嬉しいな」と、想いを明かしてくれた。 

「女子選手が増えたら嬉しい」と話す湯澤選手(右)と高橋選手

 練習が終わり、充実した表情で帰路につくメンバーを見送りながら、佐藤さんはクラブについてこう語る。「メンバー間で打ち解けてくると笑顔が増えていくし、切磋琢磨できる環境が一体感を作っているのかなと感じます。特別支援学校を卒業しても、ここで陸上を続けたいと言ってもらえるクラブでありたい。彼らのやる気や記録を伸ばしてあげたいですね」

陸上への情熱と確かな指導でクラブを率いる佐藤さん

 現在、クラブでは競技レベルや競技経験は問わないが、競技会への参加を目指して陸上に取り組みたい人を募集中です。興味がある人は、ぜひ問い合わせを。

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)