障害の有無に関係なく、純粋にフットボールを楽しみ、ともに成長することを目指す社会人のクラブ。デフリンピック出場経験のある伊賀﨑俊(いがさきしゅん)選手、江島由高(えじまよしたか)選手、松本弘(まつもとひろし)選手が、「もっと上へ、もっと外へ、色んな人とサッカーを」と声を上げ、チームを立ち上げた。
現代表兼監督である伊賀﨑さんによると、結成直後は思うようにメンバーが集まらず、2人しか練習に来ない日もあったそうだ。だが、「フットボールを通じて世の中に感動を創造し続ける存在でありたい」というチームの理念に共感した人たちが少しずつ増え、現在では選手とスタッフあわせて34人が登録するチームに成長。選手28人中15人がろう者で、現役デフサッカー・デフフットサル日本代表選手も在籍している。
チームでのろう者と健聴者の選手の主なコミュニケーション手段は、互いのボディランゲージとアイコンタクトだ。加えて、練習後に手話の練習を取り入れたことで、手話によるやりとりも可能になった。「“ありがとう”“速く”“守って”の3つの手話を覚えるだけでも、チームの連携は変わります。普段のコミュニケーションも増えました」と伊賀﨑さん。また、デフの選手は審判の笛や選手の足音が聞こえにくいため、ピッチの上では2秒に一度は周りを見るように工夫しているそうだ。
2018年4月、チームは念願の東京都社会人リーグ4部にデビューした。実は当初、障害者が多く所属するクラブチームが東京都社会人サッカー連盟に加盟した前例はなく、難色を示されたという。だが、伊賀﨑さんたちが何度も説得し、視察に来た連盟幹部の前で3部のチームと練習試合を行い、快勝。特別なサポートは不要であることを理解してもらい、新規加入につなげた。
シーズンが終わり、結果は12チーム中、4位。「優勝して3部昇格」という目標は達成できなかったが、チームの絆は深まった。その大きなきっかけは、開幕から3連敗したことだ。チーム内のコミュニケーションの壁がまだ取り払えていないと感じたスタッフの発案で、決起集会を開催。バーベキューを楽しみながら、メンバーそれぞれが腹を割って本音で話し合った。互いを理解できたことで、グループを作りがちだったメンバーがひとつになれたといい、5月には公式戦初勝利を掴むことができた。
ゼロからチームを作り上げてきた2018年。その礎を大切にしつつ、2019年は飛躍を誓う。コンセプトは「90分走り勝つ攻撃的なパスサッカー」。目標はもちろん、「4部優勝、3部昇格」だ。そのゴールに向けたステップのひとつとして、2月中旬には神奈川県社会人サッカーリーグ3部のFC NEXTARと練習試合を実施した。30分間のミニゲームを3回行い、いずれも無得点に終わったが、「新メンバーもいる状況のなかでチームの現在地を確認する良い機会になりました」と長友克樹(ながともかつき)キャプテン。チーム内の風通しもよく、「デフの選手のサッカーに真摯に向き合う姿に、僕たち健常の選手はとても刺激を受けています。どんどんコミュニケーションは取りやすくなっていますし、今年も頑張ります!」と力強く話してくれた。
「人と人が向き合い、コミュニケーションを図る大切さ」を、サッカーを通して体現しているREPLO(レプロ) TOKYO(トウキョウ)。チームの特徴を活かして、デフサッカー・デフフットサルの疑似体験会を開くなど社会貢献にも取り組んでいる。これまでも、チームの健聴メンバーや、同じ東京都社会人リーグの他チームの選手、大学サッカー部の選手やスタッフらが、耳栓をして「音のない世界」でサッカーを実体験。視覚的コミュニケーションの円滑化や相互理解に一役買っている。
また、いずれは子どもたちを対象とする下部組織の運営も視野に入れているという。
「社会におけるスポーツ界のロールモデルとして、携わるすべての人の誇りとなれるクラブを目指したい」と伊賀﨑さん。これからも、メンバー全員でチームづくりに真摯に向き合っていく。