STREET JAM(ストリートジャム)は1997年、知的に障がいがある人が平日の仕事帰りや休日に余暇活動を行う環境の少なさを改善したいという願いを込めて、ダンスサークルとして誕生した。拠点は江東区と江戸川区、大田区、都内に留まらず千葉県市川市内でもクラスを設け、通いやすい平日の夜や週末の日中に活動を行っている。親子で参加するクラスも人気だ。
大切にしているのは、その場に集まる人たちが同じ立場でダンスを楽しむ一体感。そのため、メンバーである知的障がい児・者の家族は、入会前の見学などの場合を除き、練習場所には入らずに本人たちのみが参加し、一方で親子で参加するクラスは家族もメンバーとして一緒に踊ることを原則としている。入会当初は上手に体を動かせない人や、恥ずかしくて動けない人も、そうして回を重ねるにつれ少しずつ自分のペースを掴み、ダンスを踊るようになるそうだ。
「メンバーのご家族が、周りに迷惑をかけてしまうかもしれないと心配されるんですが、大丈夫。障がいがある人にとって、初めての場所や初めて会う人、大きな音が流れる環境が苦手な人もいます。そのような人にとっては、会場の中にいられるだけで十分なんですよ、と伝えるようにしています」と、代表の中久喜泉(なかくきいずみ)さんは話す。
STREET JAMが運営するクラスのひとつ「江戸川JAM」を取材で訪れた日は、スポーツイベントで披露するオープニングダンスの練習に取り組んでいた。練習はまずは準備運動からスタートし、足上げ腹筋やプランク(※)といった筋力トレーニングに移る。メンバーのなかには一般的な体操の姿勢がとれない人もいる。だが、正しい姿勢ができるようになると、身体を温め、血流を促進し、怪我の予防につながるため、スタッフもメンバーも時間をかけて丁寧に取り組む。中久喜さんは、「正しい姿勢や体操をきちんと覚えることが、生活をするうえで、また年を重ねたときに活きてくると考えています。週に1回でもいいので、きちんと継続することが大切だと思って指導しています」と、語る。
休憩ののち、ステップやジャンプなどのさまざまな動きを行いながら身体の可動域を広げ、いよいよダンスの振り付けの時間が始まる。振り付けは、ヒップホップがベースだ。普段は慣れた動きで楽しめる振り付けが多いが、イベントで披露するダンスは練習を重ねて踊れるようになるような、少し難易度の高い振り付けを提供している。困っているメンバーがいれば周りの仲間やスタッフが声をかけ、振り付けや立ち位置を一つひとつ確認しながら進め、グループに分かれたパート練習にもしっかりと時間をかける。そして、ステージをイメージして、音楽をかけて全員で通し練習を繰り返していく。そうして得ることができる達成感を大切にしているそうだ。
※うつ伏せ状態で前腕・肘・つま先を地面につき、その姿勢をキープする体幹トレーニング