ハンドサッカーは、特別支援学校の教員が考案した7人対7人の対戦型チームスポーツだ。ハンドボールやサッカーのようにゴールにシュートをして得点を競うもので、障害の種別や程度、性別の区別なくコートに入ることができる。大きな特徴は、「フィールドプレーヤー」とフィールドプレーヤーとしてもプレーできる「ゴールキーパー」に加えて、運動機能に制限がある選手もフリースローのシュートができる「ポイントゲッター(PG)」や「スペシャルシューター(SS)」というポジションがあることだ。また、PGやSSはシュートを行う際、さまざまなボールや補助具を使用することができる。このルールにより、自身でボール保持や移動ができない重度の障害がある選手もチームの得点源として戦うことができる。
地域のクラブ紹介詳細
その他
多摩ハンドサッカー倶楽部
2008年に発足した、ハンドサッカーの市民クラブ。障害の有無や種別、性別等に関係なく、誰もが楽しめるチームづくりを目指しています。大会参加の機会を増やしたいとの想いから、2012年から「楽しもう! ハンドサッカー交流大会」を主催。多くの仲間たちとのふれ合いを大切にしています。
お問い合わせ
メールアドレスまたは以下の公式HP・SNSよりお問い合わせください
info.tamahandsoccerclub@gmail.com
HP(https://tamahand.sakura.ne.jp/)
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Instagram(https://www.instagram.com/tamahandsoccerclub/)
X(https://x.com/thc2008)
公式LINE、YouTubeもあります
クラブ紹介
毎月一回(土曜・日曜・祝日)
※詳しくはお問合せください
会員約30人
ボランティア等約10~15人
年会費:基本3,000円(スポーツ保険料込)
賛助会員の年会費:個人で申込みの場合:3,000円、団体で申込みの場合:10,000円
活動紹介
多摩ハンドサッカー倶楽部の設立は2008年。西東京市立の中学校を卒業した雪琢馬(ゆきたくま)さんが、進学した特別支援学校でスポーツに出会い、その魅力に惹かれ、「一年中、楽しくハンドサッカーができる環境を作ろう」と、仲間に声をかけたことがきっかけだ。目指したのは、市民クラブとして障害がある人もない人も一緒にプレーすること。当時はスマートフォンやSNSなども現在のように普及しておらず、周知活動は手探りだったが、地道な運営によって少しずつ口コミが広がり、結成当時は9人だったメンバーも今では約30人まで増えた。年齢層も10代から60代と幅広い。
雪さんは結成当時を、こう振り返る。「私は中学校の普通学級に通っていましたが、体育の授業もクラスメートのようにできないし、身体を動かすことも苦手でした。でも、特別支援学校でハンドサッカーと出会い、初めてスポーツが楽しいと思ったんです。クラブ設立は正直なところ、見通しがないままスタートしましたが、多くの同じ想いの人たちが関わってくれるようになり、嬉しかったです」
チームの練習は基本的に月に1回。取材に訪れた11月23日は、メンバーに加え、見学者も参加していた。スタッフやボランティアがゴールの設置やラインテープ貼りといったコート設営を手際よく行ったあと、全員で準備体操からスタート。続いて、コートを分けてPGとSSのシューター練習と、フィールドプレーヤーの練習を行った。雪さんが「一緒にやってみようよ」と声をかけた見学者も、会員からのルール説明を熱心に聞き入っていた。休憩のあと、2チームに分かれてミニゲームを実施。両チームとも丁寧にボールをつないで得点を重ね、またPGやSSも自身に合ったボールを選択して見事にゴールを決めていた。
フィールドプレーヤーの古山彩花(ふるやまあやか)さんは、使用する電動車いすにボールを保持するための手製のスペースを設け、プレーした。「今日乗っている電動車いすは新車なので、自分でいろいろ考えて工夫してみました。私はボールを手で持てませんが、スポーツができる。それがハンドサッカーの楽しいところです」と、魅力を教えてくれた。
ボランティアの存在も欠かせない。前述のとおり、練習前のコート準備やシュート練習のボール拾い、試合時の選手の移動のサポートなど、その役割は多岐にわたる。阿部由希子(あべゆきこ)さんは、東京2020パラリンピック競技大会を機にパラスポーツに関心を持ち、身近に見てみたいとの想いからボランティア募集のサイトに登録し、セミナーなどに参加していたところ、多摩ハンドサッカー倶楽部を紹介されて活動を始めたそうだ。「サポート経験はありませんでしたが、『一緒に楽しんでください』と言っていただき、何も知らない私でも役に立てるんだと思いました。次第に、選手それぞれの投げ方の工夫や持ち味が分かるようになり、すごく楽しいです。新しい世界と出会うには、一歩踏み出すことが大切だと実感しています」と語る。
多摩ハンドサッカー倶楽部は、2012年から「楽しもう! ハンドサッカー交流大会」を主催している。コロナ禍における中止を経て、今年8月に5年ぶりとなる第9回大会を開催。4チームが頂点を競った。もちろん順位はつくが、ハンドサッカーが好きな者同士、プレーできる喜びと大会の雰囲気を味わうことを大事にしているのが特徴だ。交流大会に参加したメンバーの菊屋慶佳(きくやきょうか)さんも、「私自身、競技を通していろんな人たちと出会うことができ、世界が広がりました。これからも楽しく続けられたらいいなと思います」と、笑顔で話す。
競技の認知度向上や普及活動にも力を入れている。クラブのホームページやSNSで写真や動画を用いて積極的に情報発信するほか、地域のスポーツ推進委員を対象に「障害者と健常者が一緒にスポーツをする意義」についてセミナーを行ったり、中央大学のアダプテッドスポーツの授業の講師を務める。代表の雪さんによれば、都内にも特別支援学校のクラブチームやOBらによるチームがあるが、市民クラブとして独立して活動しているのは多摩ハンドサッカー倶楽部だけだといい、「当クラブ以外にも市民クラブが増えたらいいなと思って広報活動をしています。特別支援学校を卒業した後の活動の選択肢が、より広がることを願っています」と、言葉に力を込める。
ハンドサッカーは障害の有無を超えて一緒に笑顔になれるスポーツだ。多摩ハンドサッカー倶楽部は見学者やボランティアも受け入れているので、興味を持った方はぜひ問い合わせをしてみよう。
ハンドサッカーのルールの概要はこちらをご覧ください。
(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)