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野球

東京ブルーサンダース

2024/01/26 掲載

 1997年発足の身体障害者野球チーム。四肢欠損や機能障害、麻痺など、さまざまなハンディを持った選手が、互いの障害を理解し、カバーし合い、「全員で創る野球」に取り組んでいます。目標は、日本身体障害者野球連盟が主催する春と秋の全国大会優勝! その高みに向けて、チーム一丸となって練習に励んでいます。

お問い合わせ

以下の東京ブルーサンダースのHPよりお問い合わせください

https://www.bluethun.com/
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クラブ紹介

活動場所
都内(特別支援学校など)、国立障害者リハビリテーションセンターのグラウンド ほか
活動日時

主に日曜の午後
※グラウンドの確保状況により、 土曜も活動。詳細は公式HPをご確認ください

登録者数

選手26人(身体障害者手帳・療育手帳保持者)、スタッフ13人

会費の有無

年会費:14,000円(スポーツ保険込)、学生4,500円(スポーツ保険込)
※いずれも選手登録者のみ

活動紹介

 東京ブルーサンダースは1997年に発足。東京都多摩障害者スポーツセンター利用者の中で野球好きな人たちが、センター職員だった元社会人野球選手の矢本敏実(やもととしみ)氏を当時の監督に迎えて活動をスタートさせた。結成当時のチーム名は「多摩ベースボールクラブ」で、翌1998年にチームカラーの“青”と、全国大会での活躍を目指してチーム名に地名を取り入れ「東京ブルーサンダース」に名称変更した。

 現在は、13歳から67歳まで幅広い世代の選手が所属しており、そのうち野球経験者は約半数だ。経験者も未経験者も「野球ができることに感謝しながら、全員で楽しんで勝利をつかむ」がモットーだ。今季は5月の選抜全国身体障害者野球大会でベスト4、関東・甲信越大会準優勝の成績をおさめている。全国7ブロックの1位チームのみがその舞台に立てる秋の全日本選手権大会には惜しくも出場できなかったが、次年度のリベンジを誓い、若手選手とベテラン選手が一丸となって練習に励んでいる。

練習は全員でウォーミングアップからスタート
声を掛け合いながら練習に取り組む
ノックを受ける大沼祐介キャプテン。左脚が曲がらないが軽快なステップで捕球する

 身体障害者野球では、軟球を使用し、独自のルールに則って競技を行う。たとえば、下肢障害で走塁が困難と認められる選手は、代走のランナーを指名することができるのが大きな特徴だ。そして、障害の影響でバントのような動作しかできない選手を除き、原則としてバントは禁止。盗塁や振り逃げも禁止となっている。
 また、両手でバットを握れない選手は、障害があるほうの手を装具で固定して片手でスイングしたり、グリップエンドが2個あるダブルグリップバットを使用するなど、選手は使用する道具や補助具に工夫を凝らしてプレーする。
 大切なのは、選手ごとにできることとできないこと、苦手なことなど、互いの特性を理解し、補い合ってチームを構築していくことだ。一般の野球のセオリーに加え、チーム独自の連携が必要になるのだ。財原悟史(さいはらさとし)監督は「同じポジションでも選手によって動き方や連携の仕方が違うので、選手ごとの障害の特性をリスト化し、チーム内で共有しています。どうサポートし、カバーすればよいのか、その都度みんなで一緒に考えることを重視しています」と話す。
 「みんなでサポートする」という姿勢は、運営面でも変わらない。とくに、今季からは監督やキャプテンだけでなく、選手も施設利用の予約や他チームとの連絡役を担うなど、役割分担を明確にしているといい、「少しずつですが、選手に自主性が生まれるなど、意識に変化が見えてきました」と、財原監督は目を細める。スタッフも練習時の球出しや選手の体調管理、怪我の応急処置、練習記録作成など、さまざまな仕事を手分けして取り組む。マネージャーの大沼真希(おおぬままき)さんは、「1人では解決できないことも、みんなが一緒なら解決できる。プレー面でも運営面でも、まさに『全員野球』を楽しむチームだと思います」と、笑顔を見せる。

片手でバッティング。選手一人ひとりが障害に合わせてプレーに工夫を凝らす
「ハンディをフォローしあう、それが障害者野球の魅力」と語る財原監督
「選手が活動しやすい場になるよう心掛けています」と大沼マネージャー

 取材に訪れた2023年11月26日は年内の最終練習日。この日は、交流のある女子硬式野球チーム「ZENKO BEAMS(ゼンコービームス)」の2選手と、尚美学園大学の学生がボランティア活動の一環として参加。総勢30人ほどがグラウンドに集合した。整列し、一礼してグラウンドに入った選手たちは、午後1時からウォーミングアップをスタート。準備体操ののち、塁間ダッシュやキャッチボール、トスバッティングに1時間かけて取り組んだ後、30分ほど全員で大きな声を出しながらノック練習を行った。後半は、2チームに分かれて紅白戦を実施。真剣勝負のなかにも、ビッグプレーには相手チームからも拍手が送られるなど、和気あいあいとした雰囲気で試合は進み、8-3で紅チームが勝利した。最後は全員でグラウンドを整備しながら、互いの健闘をたたえ合っていた。
 練習中も紅白戦の間も、周囲の選手に積極的に声をかけていたのが、ピッチャーの三浦寛弘(みうらともひろ)さんだ。小学4年で野球を始め、高校2年のときに外野手からピッチャーに転向。甲子園出場を目指し、神奈川県予選ではマウンドに立った。東京ブルーサンダースには、高校卒業後に加入した。先天的な右半身麻痺で、右手首から先がほとんど動かないため、左手で投げる時はグラブを右手に抱え、投げ終わるとすぐに左手にはめる“グラブスイッチ”でプレーする。「野球を始めた年は右手にグラブをはめていましたが、小学5年でこの新しいやり方を教わってから、プレーの幅が広がりました」と、三浦さんは振り返る。
 全力プレーと豪快なピッチングが持ち味。チームに入って5年目となり、今季は副キャプテンとして「みんなを引っ張る存在でありたい」という自覚も芽生えた。現在はショートにも挑戦中だといい、「このチームに入って、自分に自信がつきました。障害があるけれど何かやりたいと思っている人は、何のスポーツでもよいので、ぜひチャレンジしてほしい」と、メッセージを送ってくれた。
 来季のチーム目標は、全日本選手権大会出場だ。チームワークに一層の磨きをかけ、最高峰の舞台に挑戦していく。

紅白戦で一年間の練習を締めくくった
豪快なピッチングを見せる三浦選手
三浦選手はチャレンジすることの大切さを語ってくれた

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)