パラスポーツインタビュー詳細
竹田 有治(たけだゆうじ)さん(東京車いすテニス協会事務局)
プロフィール
名 前
竹田 有治(たけだ ゆうじ)
生 年
1965年
所 属
東京車いすテニス協会事務局
1965年生まれ、江戸川区在住。アイスホッケーやサーフィンなどに取り組み、26歳でウィンドサーフィンのプロ選手として活動をスタート。
1998年2月に病気のため車いす生活に。その後始めた車いすテニスで頭角を現し、2007年度には国内トップ選手のみ参加できる全日本選抜車いすテニス選手権大会(現 全日本選抜車いすテニスマスターズ)に出場した。
現在は屋外広告などを扱う会社の代表取締役を務める傍ら、東京車いすテニス協会の事務局を運営するなど、競技普及活動に力を入れている。
車いすテニスの普及のため、様々なイベントや大会で参加者や選手をサポートしている竹田有治(たけだゆうじ)さん。その活動の背景には、「車いすテニス界への恩返し」の思いがあるといいます。競技との出会いや、車いすテニスを取り巻く環境について、また自身の経験から伝えたい子どもたちへのメッセージなどをお聞きしました。
現在はどのような活動をされているのですか?
公式戦からは引退しましたが、ローカルの大会には選手として出場しています。東京車いすテニス協会としての普及活動では、関東近郊の大会やスポーツイベントの車いすテニスのレッスンなどで、コーチのお手伝いをしたりしています。平日はフルタイムで働いているので動けるのは週末だけですが、今年は6回ほど参加しました。
働きながら普及活動も全力で取り組む原動力は何でしょう?
私自身、車いすテニスを始めた時に本当にたくさんの先輩方に面倒を見てもらって、成長することができました。一線を退いた今こそ、その「恩返し」をしたいと思っているんです。
どんな出会いや経験があったのか、聞かせてください。
33歳の時に病気で車いす生活になりました。北区にある東京都障害者総合スポーツセンターに行ったら、たまたま車いすテニスの選手がプレーしていて、右も左もわからない私に丁寧にテニスを教えてくださったんです。自分の練習があるのに、コートの端で球打ちの相手をしてくれたりして。そうした出会いがあったからこそ、選手として努力することができ、またJWTA(日本車いすテニス協会)国内ランキングも最高3位まで上げることができました。だから今は、誰かが車いすテニスを始める時に、自分がやってもらったことを受け継げば、いずれその人たちも同じことをやってくれるかな、という思いがあるんです。コーチや指導者という立場ではないけれど、ボランティアとして自分ができる範囲でやっています。
近年はジュニア世代の選手が増えました。車いすテニスを取り巻く環境も変化しているのでしょうか?
国枝慎吾(くにえだしんご)選手や上地結衣(かみじゆい)選手の活躍を見て、「車いすテニスをやってみたい」という人が増えましたね。ただ、テニスコートの入り口が狭かったり、施設に車いすで入れるトイレが設置されていなかったりして、すぐにスタートできないケースが今でも多々あります。そのため、地元に自分でクラブを立ち上げた方もおられるくらいです。やっぱり、人より多く練習した人が上手くなるし、大会でも成績を残すわけです。練習は嘘をつきません。それなのに、テニスコートに入れない子どもたちが多いというのはかわいそうですよね。だから、環境改善を求めて声を上げていくことが大事だと思いますし、施設側にアドバイスを求められたこともあります。普段からその人の地元のテニスコートで練習できれば、一般の方が車いすテニスを見る機会が増えるし、もしかしたら一緒に練習をしたのをきっかけに、パラリンピックの会場で車いすテニスを見てくれるかもしれない。そういう一歩が大事だと思っています。
イベントなどで参加者と接する際に重視していることは何ですか?
以前は、イベントでレッスンをした時、「おはようございます」「ありがとうございます」「さようなら」を言わない子どもたちが本当に多かったです。練習やイベント会場にご両親が連れてきてくれて当たり前と思っている節があった。でも、彼らもいつかは自立して、社会で生きていかなくちゃいけない。だから、私は保護者には日常の態度のあり方についても話しますし、子どもたちには練習の前と後に親の方を向かせて「今日はありがとうございました」と挨拶をさせます。テニスの技術を向上させることも必要だけど、これから彼らが胸を張って生きていけるようにサポートしていくつもりです。
子どもたちやこれからパラスポーツを始めようと思っている人たちに、メッセージをお願いします。
私は車いす生活になって1年くらいは、本当に人前に出るのが嫌でした。でも、そんな自分を変えてくれたのが車いすテニスの仲間たちでした。ふさぎこみ、家と職場の往復だけだった毎日に、メリハリが出て、人生が豊かになりました。去年からチェアスキーもやり始めて、新たな仲間もたくさんできました。サーフィンも20年ぶりにやってみましたよ。やっぱりスポーツをしていると人生が楽しい! 今、パラスポーツに関心を持っている人は、何のスポーツでもいいので、ぜひ一度経験をしてみてください。一歩踏み出す勇気をもって、いろいろチャレンジしてほしいと思っています。
障害の有無を問わず、多くの参加者が集まった。
(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)