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2019パラ水泳春季記録会兼2019世界パラ水泳選手権大会代表選考戦

東京アスリート認定選手を含む計14名が世界選手権日本代表選手に決定!

 「2019パラ水泳春季記録会兼2019世界パラ水泳選手権大会代表選考戦」が3月2日から2日間の日程で、静岡県富士水泳場で行われた。「2019世界パラ水泳選手権大会(世界選手権)*」は、東京2020パラリンピック競技大会の出場枠がかかる重要な大会。その代表権をかけた一発勝負のタイムレースとあって、会場が緊張感に包まれるなか、男子9名、女子5名の計14名が日本代表派遣標準記録を突破した。

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木村や山田ら、ベテラン勢が存在感

 身体障害の選手では木村敬一(きむらけいいち)(東京ガス)、鈴木孝幸(すずきたかゆき)(GOLDWIN)、富田宇宙(とみたうちゅう)(日体大大学院)、中村智太郎(なかむらともたろう)(日阪製作所)、山田拓朗(やまだたくろう)(NTTドコモ)、石浦智美(いしうらともみ)(伊藤忠丸紅鉄鋼/東京アスリート認定選手)、辻内綾野(つじうちあやの)(OSSO南砂/東京アスリート認定選手)、成田真由美(なりたまゆみ)(横浜サクラ)の8名が、また知的障害の選手では田中康大(たなかやすひろ)(気愛水泳塾)、東海林大(とうかいりんだい)(三菱商事)、中島啓智(なかじまけいち)(あいおいニッセイ)、山口尚秀(やまぐちなおひで)(ジーアップ)、北野安美紗(きたのあみさ)(ルネサンス登美ヶ丘)、芹澤美希香(せりざわみきか)(宮前ドルフィン)の6名が、それぞれ世界選手権の代表入りを果たした。

 これまでのパラリンピックで銀3個、銅3個のメダルを獲得している日本のエース・木村は、200m 個人メドレー(SM11)、50m 自由形(S11)、100m 平泳ぎ(SB11)、100m バタフライ(S11)の4種目で派遣標準記録を突破。100m バタフライでは1分1秒17のアジア新記録をマークした。一緒に泳いだライバルの富田も派遣標準記録をクリアした。

力強い泳ぎで4種目の派遣標準記録を突破した木村
富田はライバルの木村と切磋琢磨し、泳ぎに磨きをかける

 木村は昨春からアメリカを拠点にトレーニングしている。全盲の木村にとって知らない土地での生活は大変なことも多いであろうが、「刺激を受けるし、自分の成長を感じながら過ごしていける」と言い切る。目指すのは、まだ見ぬパラリンピックでの金メダル。「パラ本番で自分の実力以上を出すことが難しいことを僕は知っている。だからこそ、東京の前にできるだけ記録を引き上げておきたい」と話し、「世界選手権では100mバタフライで世界新記録で金メダルを獲る」と誓っていた。

 山田は50m自由形(S9)で26秒43をマーク。自身が持つ26秒00の日本記録には及ばなかったものの、世界選手権の代表権を手にした。この得意種目で、リオデジャネイロ2016パラリンピックで銅メダルを獲得。「東京では25秒台の中盤から前半が勝負になると思うので、早く25秒台を出してライバルにプレッシャーを与えられるようにしたい」と、世界の頂点を見据えて言葉に力を込めた。

スタートの改善に取り組む山田は「精度を高めて来年につなげたい」

「東京アスリート認定選手」の石浦と辻内が派遣標準記録をクリア

 「東京アスリート認定選手」の視覚障害の石浦(S11)と辻内(S13)は、それぞれ50 m自由形で日本新記録をたたき出し、世界選手権の代表権を手に入れた。

 石浦は前半のスピードを活かして32秒09と、2018年世界ランク5位相当の好タイムでゴール。後半は泳ぎが曲がりタイムをロスしたが、「そこを修正できれば31秒台は(出せる)」と自信をのぞかせる。さらに31秒台前半まで上げていければ、東京2020パラリンピックでの表彰台も十分見えてくるだけに、「後半にどれだけスピードを維持できるかがカギ」と課題に目を向けていた。

50m自由形(S11)で派遣標準記録をクリアした石浦(撮影/MA SPORTS)

 小学生の時に水泳を始めた辻内は、2017年からパラ水泳に転向した期待の新星だ。同年6月の「関東身体障がい者水泳選手権大会」でパラ水泳デビューし、3カ月後の「ジャパンパラ水泳競技大会」では3種目で日本記録を塗り替える活躍を見せている。100m平泳ぎはパラ水泳に転向してから始めた種目でありながら、今大会も1分21秒40の日本新記録を樹立。こちらは代表切符を逃したものの、「日本新記録がコールされてびっくりしたけれど、嬉しかった」。世界選手権に向けては、「同じクラスの他国の選手と競えること、昨年のアジアパラやパンパシで仲良くなった選手に会えるのも楽しみ」と笑顔を見せた。

スタート前に集中力を高める辻内。今後のさらなる成長が期待される

 2年前の世界選手権代表の西田杏(東京学芸大)は、大きな一歩を踏み出した。昨年1年間は強化指定選手から外れるなど苦しい時期を過ごしたが、今大会は50mバタフライで39秒59の日本新記録を樹立。派遣標準記録には届かなかったが、「目標にしていた強化B指定の記録は突破できた」と、安堵の表情を見せた。実は、今年2月のオーストラリアの大会でクラス分けの見直しがあり、西田はS8からより障害が重いS7に変更になったばかり。世界選手権やパラリンピックのバタフライは、S8は100m、S7は50mが実施種目となるため、西田にとっては新たな種目への挑戦となる。練習内容も異なってくるが、「スピードを重視した練習に変更し、あと1年でしっかり上げていく。来年は派遣標準記録を切れるように頑張りたい」と話し、前を向いた。

日本代表の峰村監督は「厳しい結果」

 今大会の派遣標準記録は、全員が確実にファイナリストになる記録を想定して設定された。大会後、報道陣の取材に応じた日本代表チームの峰村史世監督は、とくに10代、20代前半の選手の記録が伸びなかったことに触れ、「リオパラリンピックで積み上げたものから、2歩3歩と下がっている状態。仕切り直し」と厳しい表情を見せた。また、世界選手権については「木村や富田、鈴木ら強化S指定選手の金メダル獲得と、代表入りした若手選手の入賞に期待したい」とコメントした。

*世界選手権は今年7月29日から8月4日まで、マレーシアのクチンで開催予定だったがキャンセルされ、3日時点では代替開催地および大会期間は未定となっている。

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)