大会・イベントレポート詳細
2014 女子世界車椅子バスケットボール選手権大会
数多くのパラリンピック競技の中でも、人気の高い競技のひとつが「車椅子バスケットボール」です。パラリンピックとは別に4年に一度開かれる世界大会として、世界車椅子バスケットボール選手権大会がありますが、この大会に女子チームのマネージャーとして帯同した、廣木美奈氏のレポートをお届けします。
2014
女子世界車椅子バスケットボール選手権大会報告
車椅子バスケットボール女子日本代表チーム
マネージャー 廣木美奈
(公益社団法人東京都障害者スポーツ協会)
大会概要
女子世界車椅子バスケットボール選手権大会は世界一を決める大会として4年に一度開催され、今回は6月17日から29日までカナダ・トロントにて行われた(主催IWBF(国際車椅子バスケットボール連盟))。今までは男女が同じ会場で同時に行われ、女子は10チームで開催していたが、今回より男女を別会場で開催することで、出場チーム数を増やし、女子は12チームがエントリーして熱戦が繰り広げられた。(男子は7月に韓国・インチョンにて開催)
カナダという国
カナダは日差しは強いが湿度が低いので、日陰に入るととても涼しく快適な気候であった。英語とフランス語が公用語であり、通常は英語で話をするが、必ずフランス語でも併記されていたのは特徴的に感じた。
街は非常に都会的でコンビニ、スーパーなどでいろいろなものが揃い、海外遠征ではあったものの気苦労は少なくて済んだ。(日本食も買うことができた)。
また、カナダは車椅子バスケットボールにおいても強豪国であり強化・育成ともに盛んな国である。男女ともパラリンピック優勝経験があり、その国で女子だけの世界選手権が開催されたことは、これからの女子車椅子バスケットボールの発展において、大きな一歩となる。
大会の雰囲気
空港からホテルまではバスで移動した。空港でのピックアップも早く、すぐにバスが来て車椅子、荷物を一緒に運んでくれた。この上なく心強かった。
そして、ホテルで選手と荷物をおろし、向かった体育館はなんと徒歩圏内という立地条件で快適であった。さらに競技用車椅子を下すのもスムーズ! 大会スタッフの方々が手馴れているという感じでどんどんおろして運んでくれた。
大会会場の体育館のストレージ(更衣室兼ミーティングルーム)はとてもきれいで、中に車椅子用トイレもあり、それが各チーム(12チーム)分ある施設はなかなかないのではないだろうか。スポーツ施設として大変すばらしいところであった。普段の遠征では、そういったところでストレスが少なからずある。しかし、この会場は文句なしといった状況だった。
唯一、何かを挙げるとすれば、冷房が効きすぎだったということ。練習会場、メイン会場も本当に冷えていた。日本チームは長袖を着ていたが、外国チームは半袖、短パンなので寒くないのかと思ったが、カナダのスタッフの方が「How Cold!!(とても寒いね!!)」と言っていたのでやはり冷えすぎだったのかもしれない。外は夏でも体育館はとても寒いということも多いので、選手に帯同する者として、海外での体調管理はそういった意味でも難しいと実感した。
ストレージ(更衣室兼ミーティングルーム)。奥に車いす用トイレがある。
開会式と開催国
このような素晴らしい環境の中で公式練習をして、環境に慣れてきたころ開会式となる。
開会式では観客が満員の状態で選手を受け入れてくれた。その中でもカナダの入場のときは腹の底から響く大歓声だった。本当に自国愛が強いと感じた。その後の国歌斉唱(カナダのみ)も会場中の人が歌った。その音の響き、大きさは忘れることはないだろう。2020年に日本にオリンピック・パラリンピックが来た時にもこのような状態であってほしいと願った。
今回の日本チームは開会式後すぐに開催国であるカナダとの対戦だった。完全アウェイの中での試合が予想されたが、実際の試合でも予想どおりカナダを応援する歓声はすごかった。コートの選手への声は全く届かず、ベンチで話をしている声ですら聞こえない状態であった。
そういった盛り上がりも対戦チームの日本としては非常に厳しい状況であったが、自国チームのカナダとしては何より心強い応援であったと思う。
試合形式
予選リーグ(6ヵ国ずつ)を行い、上位4チームが決勝トーナメントに進出する。予選リーグの後は、決勝トーナメントと決勝トーナメントに入れなかったチームによる順位決定戦を行っていった。
なお、この大会で5位以上に入賞すると、パラリンピックの出場枠がその国のブロックに1つ与えられることとなる。
試合結果
日本チームは予選リーグで、強豪国であるドイツ・カナダを始め、力をつけてきているイギリス・中国、リオパラリンピックに向けて強化を図っているブラジルと対戦した。各試合大変苦しい戦いとなり、予選リーグの結果としてはブラジルに勝利したものの1勝4敗で順位決定戦に進むことになった。順位決定戦による日本の最終順位は9位であった。
1位 カナダ | 2位 ドイツ | 3位 オランダ |
4位 アメリカ | 5位 イギリス | 6位 オーストラリア |
7位 中国 | 8位 フランス | 9位 日本 |
10位 メキシコ | 11位 ブラジル | 12位 ペルー |
大会を振り返って
日本女子チームはロンドンパラリンピックには行けなかったので、世界の舞台から遠ざかっていたがその間、世界の成長のスピードは想像以上だった。それでも毎試合しっかりと戦うテーマを決めて昨日より今日、今日より明日、成長をしていけるように臨んだ結果、確実に世界の力を吸収し、日に日によくなっていくのが分かった。それでも課題は多くある。それを乗り越えない限り、パラリンピックへの道は見えてこないと実感した。
http://www.jwbf.gr.jp/