大会・イベントレポート詳細
パラFIDジャパン・チャンピオンリーグ卓球大会2021
東京パラリンピック出場の竹守彪(たけもりたけし)選手、古川佳奈美(ふるかわかなみ)選手がV
2021年12月4日、5日の2日間、神奈川県立スポーツセンターにて、「パラFIDジャパン・チャンピオンリーグ卓球大会2021」が開催された。国内における知的障がい者卓球の男女トップアスリートが集うこの大会に、東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)に出場した選手が男子3名、女子2名エントリーし、ハイレベルな熱戦が繰り広げられた。また、同時にオープンリーグも行われ、男子は70名、女子は14名がリーグ戦を戦って優勝を争った。
男子は竹守彪選手が逆転で優勝。原一選手が東京パラリンピック日本代表に健闘
男子チャンピオンリーグは、14名の選手が2ブロックに分かれて総当たりのリーグ戦を戦い、最後にブロックの順位に応じて順位決定戦を行う。Aブロックでは、東京2020大会日本代表の竹守彪(たけもりたけし)選手と加藤耕也(かとうこうや)選手に注目が集まった。その両者は初日の2試合目でいきなり対戦。最終セットまでもつれる接戦の末、最後は3-2で竹守選手が勝利した。
パラリンピック日本代表対決を制した竹守選手だったが、初日の4試合目でつまずいてしまう。「受けに回って相手の勢いに押されてしまった」と語るように、気合十分で仕掛けてくる久保貴裕(くぼたかひろ)選手に2-3で苦杯を喫した。最終的に竹守選手と加藤選手が5勝1敗、得点11で並んだものの、最終順位は竹守選手が1位、加藤選手が2位となった。
一方、Bブロックには東京2020大会日本代表の浅野俊(あさのたかし)選手がエントリー。その浅野選手と初戦で対戦した原一(はらはじめ)選手が、粘り強いラリーを見せて3-2で勝利を飾る。これで勢いに乗った原選手は、残りの試合をすべて3-0のストレートで勝って、6戦全勝で決勝進出を決めた。
決勝で顔を合わせることとなった竹守選手と原選手は、6月のチャンピオンリーグの決勝でも対戦している。このときは竹守選手が勝利しているものの、リーグを全勝で勝ち上がった原選手は絶好調だった。決勝でもカットと強打を織り交ぜた緩急をつけたラリーで、パラリンピック日本代表を相手に主導権を握り、1セットは失ったものの、先に2セットを取って優勝に王手をかける。
一方、追い込まれた竹守選手は第4セットも一時は6-9とリードを許す劣勢だったが、3連続ポイントで同点とすると、原選手側がたまらずタイムアウト。息を吹き返した竹守選手に対して、石川貴陽(いしかわたかはる)コーチは「どうしても受け身になって押されていたので、無心になることを伝えました」と、より集中するようにアドバイスを送った。
ここから竹守選手は「ボールしか見えていなかった」とゾーン状態に入り、連続ポイントで第4セットを奪う。さらに最終の第5セットでも7連続ポイントを奪い、11-3で快勝。見事な逆転劇で、2019年大会に続く連覇を飾った。
東京2020大会後、初の公式戦でしっかり結果を残した竹守選手は、「やり切るしかないし、勝ち切るしかないと思ってやった結果、優勝できて良かったです」と安堵のコメント。「来年の2022アジアパラ競技大会では優勝、世界選手権ではメダルを獲ることを目標に頑張ります」と新たな目標への意気込みを語った。
古川佳奈美選手がパリ2024パラリンピック競技大会への第一歩を記す
女子は10選手の総当たりリーグ戦で優勝が争われた。注目選手の一人、東京2020大会銅メダリストの伊藤槙紀(いとうまき)選手は、初戦から調子が上がらず、早々に優勝争いから脱落してしまう。これに対してもう一人の東京2020大会日本代表の古川佳奈美(ふるかわかなみ)選手は、得意のサーブを武器に全勝で初日を終えた。
古川選手は2日目も順調に白星を重ねていったが、8試合目となる川﨑歩実(かわさきあゆみ)選手との対戦でフルセットの末に初黒星を喫した。この結果、古川選手と山口美也(やまぐちみや)選手が1敗で並び、2敗で川﨑選手が追うという展開で最終戦を迎えた。
「試合間隔が詰まっていて、きつかった」という古川選手は、疲れと相手のサーブへの対策にも苦しみ、最終戦の芹澤瑠菜(せりざわるな)選手との試合でも苦戦を強いられる。最終セットまでもつれ、先にマッチポイントを握られる苦しい展開だったが、「最後は勝って終わりたかった。絶対に勝つという気持ちでした」と、逆境を跳ね返して逆転勝ち。山口選手が敗れたこともあって、8勝1敗の好成績で優勝を決めた。
古川選手は東京2020大会では、前回リオ2016パラリンピック競技大会王者のナタリア・コスミナ選手(ウクライナ代表)に勝利しながらも、セット率の関係で準決勝進出を逃して悔し涙を流した。1セットの重みを知ったことが、チャンピオンリーグ制覇にもつながったという。
「東京パラリンピックでは1セットの大切さを実感しました。リーグ戦では1セットでも多くとる、1セットも与えないことが大事。今回はしっかり優勝することができたので、実力がついたと思います」
悔し涙から笑顔でリスタートを切った古川選手は3年後のパリ2024パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)に向けて、仕事を休職して卓球に専念していく。
「パリまで大会がたくさんあるので、一つひとつ頑張っていきます。そして、パリでは絶対に金メダルを獲るという気持ちでやっていきます」
今大会は男女ともに東京2020大会日本代表選手の優勝で幕を閉じたとはいえ、日本代表選手でも簡単には勝てないほど選手間の実力は拮抗していた。2022年のアジアパラ競技大会や世界選手権、その先のパリ2024大会に向けて、選手たちは切磋琢磨しながらレベルアップしていくことだろう。
取材・文/(株)ベースボール・マガジン社、撮影/中野英聡