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パリ2024パラリンピック競技大会

日本代表選手団が大活躍! 計41個のメダルを獲得

 「パリ2024パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)」が8月28日から9月8日まで、フランス・パリで開催された。難民選手団を含む史上最多の167の国と地域から約4,400人のアスリートが熱戦を繰り広げた。日本からは選手175人、競技パートナー19人を含む計330人が21競技に参加し、41個(金14、銀10、銅17)のメダルを獲得した。今回は、メダリストや東京都ゆかりの選手の活躍を中心に大会を振り返る。

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開会式は初の競技場外! パリの名所を行進

 8月28日の開会式の会場は、パラリンピック史上初めて競技場の外で行われた。各国の選手団は、パリ中心部のシャンゼリゼ通りからコンコルド広場まで行進した。コンコルド広場のステージでは、車いすに乗ったダンサーらがパフォーマンスを披露して会場を盛り上げるなか、日本代表選手団は旗手の陸上・石山大輝(いしやまだいき)選手(順天堂大院)と水泳・西田杏(にしだあん)選手(シロ)を先頭に入場。女子車いすバスケットボール代表や車いすテニスの小田凱人(おだときと)選手(東海理化)らが、大歓声のなか日の丸の小旗を振りながら笑顔で行進した。


開会式で旗手の石山大樹選手と西田杏選手を先頭にコンコルド広場に入場する日本代表選手団

日本代表から9人の複数メダル獲得者が誕生

 今大会は複数メダル獲得者が多く誕生した。水泳の鈴木孝幸(すずきたかゆき)選手(ゴールドウイン)は、個人でエントリーした4種目すべてで表彰台にのぼった。勢いをつけたのが競技初日の男子50m平泳ぎ(SB3)。北京2008パラリンピック競技大会以来となる自己ベストの48秒04をマークして金メダルを獲得し、「16年間やってきたことがようやく報われた」と笑顔を見せた。水泳ではほかに、木村敬一(きむらけいいち)選手(東京ガス)が得意の男子100mバタフライ(S11)と50m自由形(S11)の2種目を制覇し、富田宇宙(とみたうちゅう)選手(EY Japan)は男子100mバタフライ(S11)と男子400m自由形(S11)でそれぞれ銅メダルを手にするなど、ベテラン勢の活躍が光った。


水泳の鈴木孝幸選手が男子50m平泳ぎ(SB3)を制し、日本の金メダル第1号となった

 車いすテニスも日本の男女が席巻した。上地結衣(かみじゆい)選手(三井住友銀行)は、まず田中愛美(たなかまなみ)選手(長谷工コーポレーション)と組んだ女子ダブルス決勝で、東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)金メダルのオランダペアから金星を挙げ優勝。翌日の女子シングルス決勝では、第1シードのディーデ・デ フロート選手(オランダ)をフルセットで下し、見事単複二冠を達成した。3年以上にわたり世界ランキング1位を守る「絶対女王」のデ フロート選手に勝利するための足がかりをつかむため、新しいショットの習得や車いすの仕様変更などさまざまな試行錯誤を重ねてきた上地選手。試合後は「やっと来られた、この場所に」と、涙ながらに語った。
 男子では小田選手がシングルスで金メダル、三木拓也(みきたくや)選手(トヨタ自動車)と組んだダブルスで銀メダルを獲得した。フルセットマッチに突入したシングルス決勝では、第1シードのアルフィー・ヒューエット選手(イギリス)に先にマッチポイントを握られながらも脅威の精神力で巻き返し、2時間38分の激闘を制した。18歳の史上最年少金メダリストは「これまでで一番楽しい試合だった」と、充実した表情を見せていた。


車いすテニス女子シングルス決勝で互いに健闘をたたえ合う上地結衣選手(右)とデフロート選手

 東京2020大会で初採用されたパラバドミントンは、男女そろって「2連覇達成」の偉業を果たした。車いす女子WH1の里見紗李奈(さとみさりな)選手(NTT都市開発)は、シングルスの予選リーグで逆転負けを許した尹夢璐(イン・ムロ)選手(中国)に再戦した準決勝で競り勝ち、決勝ではライバルのひとりであるスジラット・ポッカム選手(タイ)にフルゲームの末に逆転勝利をおさめた。車いす女子WH2の山崎悠麻(やまざきゆま)選手(NTT都市開発)と組んだダブルスは優勝を逃したものの、銀メダルを獲得した。
 車いす男子WH2の梶原大暉(かじわらだいき)選手(ダイハツ工業)は、シングルス決勝で陳浩源(チャン・ホゥユェン)選手(香港)にストレート勝利。予選リーグから決勝まですべての試合で1ゲームも落とさない完全勝利で公式戦の連勝記録を「125」に伸ばし、大会2連覇を飾った。車いす男子WH1の村山浩(むらやまひろし)選手(SMBCグリーンサービス)と組むダブルスでも3位に入った。


パラバドミントンの梶原大暉選手は男子シングルスで並みいるライバルを倒し2連覇を達成した

 また、ボッチャでは初出場の遠藤裕美(えんどうひろみ)選手(福島県ボッチャ協会)が女子個人BC1と混合チーム(BC1/BC2)の2種目で銅メダルを獲得。陸上では、佐藤友祈(さとうともき)選手(モリサワ)が男子100m(T52)で銅メダル、男子400m(T52)で銀メダルを手にした。

“史上初”の快挙を成し遂げた選手たち

 「史上初」の実績を残した選手・競技も多かった。柔道は2022年のルール改正で、全盲(J1)と弱視(J2)の2クラスに分かれたうえで、男女とも体重別の4階級に変更された。その新ルールで行う初めてのパラリンピックで、女子57㎏級(J2)の廣瀬順子(ひろせじゅんこ)選手(SMBC日興証券)が初戦から一本勝ちで勝ち進み、日本女子史上初の金メダルを獲得。同48㎏級(J1)の半谷静香(はんがいしずか)選手(トヨタループス)も同階級で初めて決勝に駒を進め、惜しくも敗れたが銀メダルに。東京2020大会は男子66㎏級で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎(せとゆうじろう)選手(九星飲料工業)は男子73㎏級(J2)に階級変更して臨み、オール一本勝ちで金メダルを獲得した。


日本女子柔道初の金メダルを獲得した廣瀬順子選手(右)

 卓球の知的障害のクラスでは、パラリンピック初出場の和田(わだ)なつき選手(内田洋行)が女子シングルス(クラス11)決勝で東京2020大会金メダリストを破り、卓球日本の男女を通して初の優勝を果たした。


卓球では男女通じて初の金メダルを獲得した和田なつき選手

 射撃では、2度目のパラリンピック出場となる水田光夏(みずたみか)選手(白寿生科学研究所)が混合10mエアライフル伏射(SH2)で日本パラ射撃界初となる銅メダルを獲得した。水田選手は、「目標を達成し、とても楽しめた大会だった」と振り返った。
 そのほか、自転者競技では東京2020大会で日本史上初の2冠を達成した53歳の杉浦佳子(すぎうらけいこ)選手(総合メディカル)が、女子個人ロードレース(C1-3)で連覇を達成。自身が持つ日本選手の金メダル最年長記録を更新した。

 団体競技も「初優勝」の歴史的快挙を成し遂げた。2大会連続銅メダルの車いすラグビー代表は、4度目の挑戦でついに準決勝の壁を破り、決勝に進出。その決勝ではアメリカと対戦し、持ち味の堅い守りで試合をつくり48-41で勝利した。悲願の金メダル獲得に、キャプテンの池透暢(いけのぶゆき)選手(日興アセットマネジメント)は、「みんなの夢がかなった最高の瞬間」と喜びを語った。


悲願の金メダルを獲得した車いすラグビー日本代表

 ゴールボール男子代表も、攻守とチーム力の高さで強豪を下して勝ち進むと、ウクライナとの決勝では延長戦にもつれ込む接戦を4-3で制した。金メダルをたぐりよせる決勝点を挙げた佐野優人(さのゆうと)選手(日本国土開発)は、「自分のゴールボール人生史上一番のプレーだった。一生、忘れないと思う」と振り返った。


延長戦を制し、抱き合って喜ぶ男子ゴールボール日本代表メンバー

東京都ゆかりの選手も躍動

 東京都の「東京ゆかりパラアスリート」認定選手(令和6年度)も、それぞれの舞台で力を発揮した。前述のように、車いすテニスの田中選手は女子ダブルスで金メダルに輝いた。車いすラグビーの小川仁士(おがわひとし)選手(バイエル薬品)、男子ゴールボールの田口侑治(たぐちゆうじ)選手(リーフラス)、宮食行次(みやじきこうじ)選手(コロプラ)、萩原直輝(はぎわらなおき)選手(LINEヤフー)は、それぞれ優勝チームのメンバーとして活躍した。

 車いすフェンシングの加納慎太郎(かのうしんたろう)選手(LINEヤフー)は、初戦となる男子個人サーブル(カテゴリーA)の敗者復活2回戦で、過去4大会の2種目で4個のメダルを獲得しているハンガリーの選手から初勝利を挙げた。加納選手は同3回戦で敗れたものの、「自信につながった」と手ごたえを口にした。メダル獲得を狙った男子フルーレ団体は準々決勝で敗退となった。


車いすフェンシング男子フルーレ(カテゴリーA)でトルコの選手と競り合う加納選手(右)

 パラリンピック初出場のボッチャの一戸彩音(いちのえあやね)選手(スタイル・エッジ)は、女子個人BC3で7位入賞を果たし、有田正行(ありたまさゆき)選手(電通デジタル)とペアを組んだBC3混合ペア戦では9位に入った。
 卓球男子の岩渕幸洋(いわぶちこうよう)選手(協和キリン)は、男子シングルス(クラス9)の初戦で敗退。女子シングルス(クラス8)で5位に入賞した友野有理(とものゆり)選手(タマディック)と組んだ混合ダブルスは2回戦敗退だった。
 トライアスロンの木村潤平(きむらじゅんぺい)選手(Challenge Active Foundation)は、男子PTWCで8位に入賞。試合後は、「念願のメダルは獲得でなかったが、多くの皆様の声援のおかげでパリの素敵な景色のなか、最後まで走り切ることができた」と、周囲の人々のサポートに感謝していた。

選手の背中を押した、「応援の力」

 今大会は、どの会場も観客席がほぼ満席になるなど、大いに盛り上がった。フランスの人々は、地元の選手に対して国旗を掲げ、また顔パネルなどを使って大声援を送っただけでなく、国や結果に関係なく良いパフォーマンスをしたアスリートへは拍手などで賛辞を送り続けた。深夜に及んだ表彰式でも多くのファンが最後まで残り、アスリートに敬意を表していた姿が印象深い。また、日本から駆けつけた応援団も多く、観客席からはフランス語と英語と日本語の声援が飛び交い、選手たちは口々に「本当に嬉しかった。応援に背中を押してもらった」と話していた。


車いすフェンシング会場のグラン・パレも満員の観客で埋まった

 日本代表選手団の田口亜希(たぐちあき)団長は会見を開き、会場の盛り上がりについて、「フランスの人々はウェーブをして盛り上げてくれたり、結果を問わずスタンディングオベーションをして選手を称えてくれていた。日本から来ている応援団と一緒に『ジャパン!』とエールを送ってくれて、選手にとっては大きな励みになったと思う」と振り返った。
 日本代表選手団の好成績の背景には、2019年に完成したNTC・イースト(味の素ナショナルトレーニングセンター屋内トレーニングセンター・イースト)があるとし、「スタッフとともに集中的に強化できた結果」と語る。また、「メダルに届かなかった選手も、これまで勝てなかったライバルを制するなど、数字や結果だけでは表せない達成度を感じている。無限の可能性、パラスポーツの価値を体現してくれたと感じている」と話し、4年後のロサンゼルス2028パラリンピック競技大会に向けて「選手がさらに輝けるように環境整備や強化に取り組んでいきたい」と結んだ。

(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)

日本代表選手

メダル/数 競技/種目 名前
金(14) ゴールボール 萩原直輝/金子和也/宮食行次/佐野優人/田口侑治/鳥居陽生
バドミントン/男子シングルス(車いすWH2) 梶原大暉
バドミントン/女子シングルス(車いすWH1) 里見紗李奈
柔道/女子57キロ級(弱視) 廣瀬順子
柔道/男子 73キロ級(弱視) 瀬戸勇次郎
競泳/男子50m自由形(視覚障害S11)
/男子100mバタフライ(視覚障害S11)
木村敬一(2)
競泳/男子50m平泳ぎ(運動機能障害SB3) 鈴木孝幸
卓球/女子 シングルス(知的障害) 和田なつき
車いすラグビー 羽賀理之/長谷川勇基/橋本勝也/池透暢/池崎大輔/倉橋香衣/草場龍治/中町俊耶/乗松聖矢/小川仁士/島川慎一/若山英史
自転車・ロード/女子個人ロードレース(運動機能障害C1~3) 杉浦佳子
車いすテニス/男子シングルス 小田凱人
車いすテニス/女子シングルス 上地結衣
車いすテニス/女子ダブルス 上地結衣/田中愛美
銀(10) 陸上競技/男子400m(視覚障害T13) 福永凌太
陸上競技/男子400m(車いすT52) 佐藤友祈
陸上競技/男子5000m(視覚障害T11) 唐沢剣也
陸上競技/女子円盤投げ(座位F53) 鬼谷慶子
バドミントン/女子ダブルス(車いす) 里見紗李奈/山崎悠麻
柔道/女子 48キロ級(全盲) 半谷静香
競泳/男子50m自由形(運動機能障害S4)/男子100m自由形(運動機能障害S4) 鈴木孝幸(2)
競泳/男子100m背泳ぎ(運動機能障害S8) 窪田幸太
車いすテニス/男子ダブルス 三木拓也/小田凱人
銅(17) ボッチャ/女子個人(脳性まひBC1) 遠藤裕美
ボッチャ/混合チーム(脳性まひ) 遠藤裕美/広瀬隆喜/杉村英孝
陸上競技/男子100m(視覚障害T13) 川上秀太
陸上競技/男子100m(車いすT52) 佐藤友祈
陸上競技/男子400m(車いすT52) 伊藤智也
陸上競技/男子マラソン(車いすT54) 鈴木朋樹
陸上競技/女子マラソン(視覚障害T12) 道下美里
バドミントン/男子ダブルス(車いす) 梶原大暉/村山浩
柔道/女子70キロ級(弱視) 小川和紗
競泳/男子200m自由形(運動機能障害S4) 鈴木孝幸
競泳/男子400m自由形(視覚障害S11)/男子100mバタフライ(視覚障害S11) 富田宇宙(2)
競泳/男子100m平泳ぎ(知的障害) 山口尚秀
競泳/女子100m自由形(視覚障害S12) 辻内彩野
競泳/女子200m個人メドレー(知的障害) 木下あいら
卓球/女子シングルス(知的障害) 古川佳奈美
射撃/混合エアライフル伏射(運動機能障害SH2) 水田光夏

東京ゆかりパラアスリート認定選手

メダル 競技/種目 名前
ゴールボール 宮食行次/萩原直輝/田口侑治
車いすラグビー 小川仁士
車いすテニス/女子ダブルス 田中愛美
射撃/混合エアライフル伏射(運動機能障害SH2) 水田光夏
水泳/男子400m自由形(視覚障害S11)/男子100mバタフライ(視覚障害S11) 富田宇宙(2)