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第17回全国障害者スポーツ大会

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障害者スポーツの一大祭典が愛媛県で開催東京都代表選手たちも参加し健闘

 第17回全国障害者スポーツ大会(愛称:愛顔つなぐえひめ大会)が、2017年10月28日(土)から30日(月)まで、愛媛県にて開催された。同大会は障害者スポーツの全国的な祭典であると同時に、国民の障害者に対する理解を深め、障害者の社会参加を推進することを目的としている。
大会で実施される競技は、個人競技が陸上競技(身・知)、水泳(身・知)、アーチェリー(身)、卓球(身・知 ※サウンドテーブルテニス(身)を含む)、フライングディスク(身・知)、ボウリング(知)の6競技。団体競技はバスケットボール(知)、車椅子バスケットボール(身)、ソフトボール(知)、グランドソフトボール(身)、フットベースボール(知)、バレーボール(身)、バレーボール(知)、バレーボール(精)、サッカー(知)の9競技。
 東京都は、個人競技のすべてと、ソフトボールとバレーボール(精)を除く団体競技にエントリー。28日の開会式は台風接近による悪天候の中、皇太子殿下のご臨席を賜り、選手団約3300人が参加して堂々と入場行進が行われた。同大会での東京都代表選手たちの奮闘ぶりをレポートしたい。

競技別レポート

車椅子バスケットボール(会場:今治市営中央体育館)

1回戦

東京都(関東ブロック) 対 愛知県(北信越・東海ブロック)

35–50(第1ピリオド 11–12、第2ピリオド 6−14、第3ピリオド 14−14、第4ピリオド 10−4)

 第1ピリオドは、両チームの守備陣が奮闘し、一進一退の攻防。東京はエース山口を中心にインサイドシュートを決めるなど、強豪の愛知とほぼ互角に渡り合った。しかし、第2ピリオドに入ると愛知が自力を発揮。攻守に圧倒された東京はリードを広げられて苦しい展開となり、17−26で前半を終了。第3ピリオド序盤は、愛知の得点源である大島を徹底マーク。相手エースにボールを持たせないディフェンスにより、東京が流れを掴む。その後は、愛知も速攻で得点を重ねて流れを奪い返し、両者一歩も譲らず接戦模様。しかし、終盤に愛知が突き放して東京は9点のビハインドで第3ピリオド終了。最終ピリオドは、互いに激しいディフェンスの応酬で、得点が伸びない。だが、後半は安定したシュート力とスピードを見せつけた愛知が攻守ともに試合を制し、東京は35—50で力負け。準決勝進出はならなかった。強豪を相手に最後まで厳しいディフェンスで奮闘した東京チームには、会場から大きな拍手が贈られた。

交流戦結果
東京都 23—19 仙台市(北海道・東北ブロック)
東京都 31—29 岡山県(中国・四国ブロック)

ロングシュートを放つ、東京の山口(⑦)
ボウリング(会場:キスケボウル)

 一貫して危なげない投球を見せた少年男子・山田は尻上がりにスコアをアップ。特に圧巻だったのは第4ゲーム。序盤からストライクを連発して203点を獲得し、トータル746の好スコアで金メダルに輝いた。壮年男子・松田も好調で、第2ゲームこそスコアを落としたものの、慎重に立て直してスコアを挽回。第4ゲームでは194点をマークし、見事な逆転でクラス1位を奪った。山根(壮年男子)、榎本(壮年女子)、太田(青年男子)の各選手も2位と健闘。東京都は金2・銀3を獲得する好成績で大会を終えた。

絶好調で好記録を連発した、東京の山田
アーチェリー

 台風接近により、雨と強風に見舞われる最悪のコンディションの中、選手たちはしっかり集中して競技に臨んだ。各選手がスコアリングに悩まされていたが、活躍が光ったのは女子リカーブ30mダブルラウンドに出場した新井。下肢障害クラス4選手中で僅差ながらも277点と好記録をマークして1位に輝いた。男子コンパウンド50m・30mラウンドに出場した大山も、悪コンディションをものともせず、272点の好スコアで1位。東京都は出場した4選手が全員メダルを獲得という好成績を残した。

台風接近による悪天候のなかで、奮闘する選手たち
陸上競技

 悪コンディションをものともせず、東京都代表選手たちが抜群のパフォーマンスを発揮し、金38・銀26・銅21というメダルラッシュに湧いた。中でも印象深い活躍をしたのが、女子100mと走幅跳の視力障害2種目を制した澤田。2種目ともに大会新記録の快挙で圧巻のパフォーマンスを見せてくれた。男子では、同じく視力障害の選手である山路も100mと200mの短距離2種目をともに大会新記録で制して堂々の2冠。100mでは水谷、200mでは吉川、800mの松谷も大会新記録での優勝を果たし、期待された選手が見事に結果を出した。4×100mリレーも2位以下を引き離して東京都が圧勝。チームワークの強さも見せてくれた。

 投てき種目では、男子ソフトボール投げの眞野、男子ジャベリックスローの永盛、男子ビーンバッグ投げの佐々木がそれぞれ大会新記録で優勝。惜しくも2位に終わったが、女子ソフトボール投げの高橋も大会新記録。4つの大会新記録を出した東京都チームの好成績が光った。

大会新記録で100mを制した東京・澤田
走幅跳で優勝した、東京・大西の跳躍
身体2部100mで優勝した東京・眞野
懸命の表情でゴールする東京・鈴木は惜しくも2位
バレーボール(知的・男子)

準決勝

東京都 対 北九州市

2−0(1s 25-15、2s 25-13)

 初戦が準決勝となった東京は、地元の愛媛を倒して勝ち上がった北九州と対戦。第1セットは、東京が6番是津、11番渡邊の活躍などで序盤をリード。北九州もエースの小笠原のスパイクを中心に反撃し、7-8と詰め寄られるが、東京は渡邊のサービスエースをきっかけに流れを取り戻し、3番田丸、4番上原のスパイクが効果的に決まり、第1セットを先取。続く第2セットは、東京が4番上原のサーブで北九州のレシーブを崩し、渡邊のAクイック、上原、9番兼平、1番松本のスパイクなどで得点を重ねる。北九州も粘り強く対抗し、小笠原にボールを集めたが、最後は東京が押し切って快勝。決勝にコマを進めた。

東京・上原(④)のスパイクが決まる

決勝

東京都 対 兵庫県

2–1(1s 18-25、2s 25-18、3s 25-19)

 連覇を狙う東京の決勝の相手は兵庫県。第1セット、兵庫は6番青木のジャンプサーブで東京の守備を乱してリード。中盤以降に東京がセンターから速攻を仕掛けてリズムを崩そうとするも及ばず、このセットを失う。第2セットは序盤から東京が力強いスパイクを叩き込み、得点を重ねる。6番是津の巧みなトスワークが光り、東京が第2セットを奪い返した。迎えた第3セット、両者の意地がぶつかり合い、一進一退の攻防に。東京が多彩な攻撃で押し込むが、兵庫の攻撃も厚みがあり、行き詰まる熱戦が続く。しかし終盤、東京は11番渡邊のブロックと9番兼平のスパイクを皮切りに点差を広げ、マッチポイントを迎える。最後は3番田丸のAクイックが兵庫コートに決まって大熱戦も終止符。東京が見事な連覇を達成した。

優勝を決めた東京チームが歓喜の胴上げ
バレーボール(知的・女子)

1回戦

東京都 対 兵庫県

2–1(1s 22-25、2s 25-19、3s 25-19)

 東京の初戦の相手は兵庫県。第1セット、リードされた東京は1番小野寺のサーブなどで必死に追い上げるが、安定した兵庫の攻撃に跳ね返され、このセットを奪われる。続く第2セット。中盤まで互角の展開だったが、終盤で小野寺のスパイクを中心にリズムをつくった東京が、9番山﨑のサーブなどで得点を重ね、セットを奪い返す。第3セットは、勢いにのる東京が序盤からエース小野寺の躍で得点を重ね、粘る兵庫を突き放して勝利を飾った。

準決勝

東京都 対 山口県

2–0(1s 25-9、2s 25-18)

 山口県との準決勝。第1セット、東京は2番森本のサーブからチャンスをつかみ、エース小野寺が着実に決めて序盤から圧倒。交代出場で入った12番佐藤のサービスエースが連続して決まるなど、選手交代もハマってこのセットを先取。第2セットは山口が攻守を立て直して接戦に。両チームの粘り強いレシーブ合戦となるが、東京は終盤に2番森本、4番相根らが活躍し、セットカウント2-0で快勝。決勝進出を決めた。

決勝

東京都 対 愛媛県

2–0(1s 25-8、2s 25-15)

 地元愛媛を迎えた決勝戦。相手応援団の大声援が響くなか、東京は1番小野寺の強烈なスパイク、6番小暮のレフトからの攻撃が決まり、序盤からリード。大声援をバックに愛媛も懸命に応戦してくるが、東京序盤のリードを保ってこのセットを圧倒した。第2セット。後のない愛媛は、3番菊池の活躍などで接戦となるも、東京は絶好調の小野寺のスパイクや4番相根のサービスエースなどでリードを奪う。小野寺を中心に、2番森本のスパイク、9番山﨑のサービスエースなどで効果的に得点を重ねた東京が勝利。終始危なげない戦いぶりで男女アベック優勝を果たした。

水泳

 初日のレースは25m自由形から。東京都は、この種目に出場した9選手、7人が優勝という快挙で素晴らしいスタートとなった。川辺、水上、但木の3選手が大会新記録を出すなどチーム全体が勢いづく。25m平泳ぎの小松、25m背泳ぎの山内も大会新と、初日からレコードラッシュとなった。

 2日目は25mバタフライからスタート。2日連続の大会新で優勝した山内に続き、志村、長尾も好タイムで優勝。圧巻だったのは50m自由形で、6選手が金メダルを獲得。うち水上、長野、但木の3人が大会新記録。水上と但木は25mとの2冠に輝いた。続いて20m平泳ぎも遠藤が優勝、50m背泳ぎでも中庭、井が金メダルを獲得。東京都代表の連日の活躍が目を惹いた。

 最終日に行われた250mバタフライでも、東京勢が大活躍。阿部が圧巻の泳ぎで大会新記録を樹立して観衆の度肝を抜くと、長野、冨田、長尾の3選手も優勝。前評判通りの実力を大いに発揮した。200mリレーでも接戦を制して優勝を飾り、金26・銀4・銅3個という見事な好成績で大会を終了。表彰台で胸を張る東京都代表選手たちの晴れやかな姿が印象に残った。

スタート台に立つ、東京・松田
大会の上位入賞者たち 200mリレー。東京は第2泳者・中庭から第3泳者・志村につなぐ

閉会式レポート

 第17回全国障害者スポーツ大会「2017愛顔(えがお)つなぐえひめ大会」は、10月30日に全日程を終了。3日間にわたって熱戦を繰り広げた障害者アスリートの祭典が幕を閉じた。愛媛県総合運動公園陸上競技場(ニンジニアスタジアム)にて閉会式が行われ、15時からのオープニングプログラムに引き続き、15時40分に式典がスタート。中村時広(愛媛県知事)大会会長、鈴木大地スポーツ庁長の挨拶に続き、高円宮妃久子さまが登壇。「日頃の練習の成果を発揮し、皆さんの躍動する姿は、感動という風になって愛媛県内を駆け抜けたことと思います。愛顔があふれる素晴らしい大会でした」と述べられた。続いて大会旗が、中村時広知事から次回開催の福井県の西川一誠知事に手渡された。

 東京都選手団は、本大会において金80・銀43・銅33個、総数156個のメダルを獲得。各選手が抜群のパフォーマンスを発揮し、このような好成績を残したことは大いに称えられる。選手、関連団体、関係者、支援者にとっても、実りの多い大会となった。

3日間の日程を無事終了し、閉会式に参加した選手たち
選手たちの情熱とともに燃え続けた炬火

取材後記(愛顔つなぐえひめ大会取材チーム)

 寒空の中、閉会式に参加し、長い式典が続いたので、選手たちの体調も心配だったが、彼らの晴れやかな表情と充実感に満ちた笑顔に救われた。結果を残せた選手もそうでなかった選手も、万全を尽くしてこの日に備えて、戦ったことは確かだ。個人的に印象に残ったシーンがある。東京都の選手ではないのだが、陸上競技の100mに出場したある壮年の男子選手だ。ほかの選手たちが車椅子で疾走するなか、その選手だけが明らかに遅い。上腕にも力が入らないようで、それでも懸命な表情でゆっくりと前進していく。完走できるのか、心配になって見つめていたが、ゴールまではまだまだ遠い。観衆からも拍手が起こり、スタジアム全体が祈るような思いで彼を応援した。タイムは4分を超えたが、見事な完走を果たしたその選手のガッツポーズが美しかった。あのシーンに、この大会の意義が集約されていたように思う。大会に参加したすべての選手に敬意を表したい。

寄稿コラム① 障スポの現場から

車椅子バスケットボール編

 会場の今治市営中央体育館に着くと、厳しいセキュリティチェックを受けた。空港にあるのと同じセンサーの付いたゲートをくぐらねばならず、なんだかものものしい雰囲気。この会場には皇太子殿下が来場されることになっているので、この厳重な警備にも納得するしかない。それほど、車椅子バスケットボールが大会の花形競技であることを認識し、こちらの興奮も高まる。

 初戦を迎える東京都チームの応援が目的だったが、ちょうど前の試合の岡山県対神戸市の試合が山場を迎え、場内はすごい熱気に包まれていた。大量リードされていた神戸が、激しいディフェンスからリズムをつかんで、徐々に得点差を詰めていく。車椅子同士の接触で、選手が転倒するシーンも連続。すごい迫力である。「ガシャン」という接触音が観客席に響き、緊張感が抜群だ。そして、試合は終了間際に、神戸の選手のミドルシュートが決まり、神戸が鮮やかな逆転勝利を収めた。私も思わず立ち上がって拍手してしまった。「なんて面白いんだ!」

 プロのバスケットボールも生観戦したことがあるが、それに劣らぬ熱気と興奮。スリリングな終盤の攻防に期待がグッと高まる。東京チームは、どんな戦いを見せてくれるのだろう。

 ついに試合開始。東京は黒のユニフォーム。なかなか強そうに見える。対する愛知はホワイト基調。一際目立つのは、愛知15番の選手。周囲の選手より大きく見えるのは、車椅子の位置が高いせいもある。彼が得点源の選手であることがひと目でわかった。同様に東京の7番・山口選手も椅子の位置が高い。顔つきも精悍で頼もしい。彼がこちらのエースに違いない。

 第1ピリオドから、両チームの厳しいディフェンスが目に付く。山口選手のシュートなどで得点を重ねる東京。だが、愛知チームのシュート力も素晴らしく、序盤は互角の戦いだ。しかし、第2ピリオドに入ると、山口選手が徹底マークされ、苦しい展開だ。東京守備陣も必死に耐えるが愛知の厚みのある愛知の攻撃に徐々に離されていく。13番伊東選手を中心に攻撃を立て直すが、大きくリードされたまま、17-26で前半終了。後半も東京は果敢にシュートを狙うが、相手ディフェンスがとにかく激しい。パスをつないで攻撃を繰り返すが、なかなか決まらない。余裕を見せる愛知は、エースをおとりにして、ほかの選手たちにボールを回し、ポンポンと決めていく。しかし、東京は11番の天羽選手が連続ポイント決めるなど必死の反撃。守備も5番の仙座選手らが奮闘し、東京のリズムが出てきた。しかし、愛知もやはり強い。結局、東京は35-50で敗れてしまった。

 敗れはしたが、東京チームの奮闘ぶりは印象深かった。攻撃では、山口、伊東、天羽選手のポテンシャルの高さを感じたし、守備では仙座選手のスピードあふれる動き。こんなにも車椅子を激しく操作できるのかと、ひたすら驚いた。彼らにとっては悔しいゲームだったかもしれないが、どうか胸を張ってほしい。(ライター・渡辺敏樹)

寄稿コラム② 障スポの現場から

男子バレーボール(知的)編

 最終日。この日は水泳会場で取材をしていた私たちだったが、隣接する愛媛県武道館がずっと気になっていた。バレーボール会場では、東京チームが男女ともに決勝戦を戦っているからだ。途中、女子チームが優勝を果たしたという情報はすでに入っていたが、男子はまだ熱戦の真っ最中のようだ。なんとしても見たい。できれば優勝の瞬間に立ち会いたい。我々は愛媛武道館に急いだ。  息も絶え絶えに我々が会場に到着すると、試合は第2セットの開始直後だった。東京は第1セットを失ったとのこと。しかも、会場は明らかに相手の兵庫県の声援のほうが大きく、アウェーの雰囲気なのだ。これはまずい…。

 しかし、私の心配をよそに、東京チームは絶好調だ。スパイクを相手コートにガンガンたたき込んでいく。途中で何度か兵庫に流れが傾くシーンもあったが、東京チームは落ち着いた試合運びで、主導権を渡さない。特に6番のセッター・是津選手のトスワークが素晴らしい。しかし、兵庫もさすがに決勝に出てくるだけあって、個人のスキルが高く、一進一退だ。それでも、空中戦を制した東京が、このセットを奪い返した。これでセットカウント1-1のタイに持ち込み、勝負は運命の最終セットへ。

 セット序盤は東京がリードしたが、兵庫にリズムをつかまれて苦しい展開となる。それでも懸命に食い下がる東京は、徐々に挽回。セット中盤は東京優勢で進む。両者の意地と意地がぶつかり合い、勝負の行方はまったくわからない。その頃、遅ればせながら東京チームの応援席が埋まってきた。大声援で後押しし、試合は終盤へ。11番渡邊選手の高さのあるブロックが決まり、9番の兼平も力強いスパイクを決めていく。完全に東京が主導権を握ったようだ。

 兵庫も健闘するが、試合はそのまま東京の優勝で終了。選手たちの満面の笑みとガッツポーズを見ることができた。そして歓喜の胴上げシーンも生で味わうことができ、大いに感激。やはり、スポーツをやる者にとって、頂点に立つということはかけがえのない喜びである。印象深かったのは、東京のチームワーク。ミスをした選手や攻撃が決まらなかった選手には、すぐにチームメートが駆け寄り、笑顔で励ます場面が目立った。試合に出られないベンチの選手も大いに声を出してサポートする。それが強さの秘密なのだろう。

 彼らこそ、頂点に立つのにふさわしいチームだったことは間違いない。

(ライター・渡辺敏樹)